今「終活」という言葉がテレビなどメディアでよく取り上げられるようになり、多くの人が関心を持つようになりました。「終活」とは、人生の最期を迎えるにあたって、これからの人生を自分らしく生きるための準備をし、亡くなった後に備えることです。では、「終活」とは具体的のどのようなことを行うものなのでしょうか。そして、今なぜ「終活」が必要とされているのでしょうか。今回は、「終活」が求められている理由や時代背景を探り、人生の締めくくりに向けてすべきこと、備えるべきことを見ていきましょう。
⑴終活が求められる時代背景
まず、終活が注目されている理由のひとつに、少子高齢化が進んでいることがあげられます。全人口に占める高齢者(65歳以上)の割合が、7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会、21%を超えると超高齢社会といわれますが、日本では、2013年には25%を超えその後も年々増加しており、超高齢社会となっています。また、高齢者を支える現役世代の人数は、2050年には1.4人にまで減少すると予想されていることから、生活や医療、介護にかかる負担を現役世代だけに頼らず、高齢者自身の負担も増えていくと考えられます。そのようなことから、高齢期に備えて必要な資金を準備しておくことも、終活のひとつです。また、平均寿命が延びると人生の後半期が長くなります。人生の後半期をよりよく過ごすために、病気や要介護状態なって自由に動けなくなっても、あるいは認知症になったとしても、最期まで自分らしく過ごせるように準備しておくことも重要になってくるのです。
終活が必要とされる理由のふたつめとして、時代とともに家族のかたちが変わったこともあげられるでしょう。かつて日本では、「家制度」というものが存在し、戸主(家長)には家の経済や祭祀などを管理するとともに、家を統率し家族を扶養する義務がありました。戸主(家長)を中心として親子、孫、兄弟姉妹などが同じ家に住み、跡を継ぐ者(家督相続)が結婚後もその家で子供を育て、親の面倒を見る、ということが代々行われてきたのです。しかし、1947年に日本国憲法の施行に合わせて民法が大改正され「家制度」も廃止されました。よって現在の日本では、家や家族に縛られることなく、個人が自由に生きることができる社会になったのです。結婚しない生き方を選ぶ人も増え、子供のいない夫婦や、子供がいたとしても独立して親とは別に暮らすことが多くなりました。親世帯はいずれ高齢者の一人暮らしとなるケースが増えています。一人暮らしで医療や介護が必要になった場合、誰に面倒を見てもらうのか、また、自分が亡くなった後の手続きは誰に任せるのか、そのようなことを考えて、終活を始める人も増えているのです。
⑵終活ですべきこと~エンディングノートの活用~
では、終活とは具体的にどのようなことを行うのでしょうか。終活は、これまでの自分の人生を振り返ることからはじまります。そして、自分の好きなことややりたいこと、新しく始めたいことなどを考え、まずはこれからの自分の生活をイメージしてみましょう。このことは、最期まで自分らしく生きるための大事な根幹となることです。そのうえで、おおまかに次の事柄をノートに書きだしていきます。
・自分自身に関する情報
・親戚・友人・知人などの人間関係
・貯蓄や不動産など、所有している財産について
・お葬式や相続などの死後のことについて
終活を進めるうえで欠かせないのが、これらの記載事項を1冊にまとめた「エンディングノート」と呼ばれるものです。「エンディングノート」には遺言書のような法的な効力はありませんが、終活のさまざまな場面で役に立ちます。では、記入することを具体的に見ていきましょう。
⒈自分自身に関する情報
◎基本情報…氏名、生年月日、住所、本籍地など、個人を特定する情報や、趣味、好き嫌いなど内面がわかる情報を書きます。
◎自分史…生まれたときから現在まで、どのような人生を送ってきたか、自分の人生を振り返り、これからの過ごし方を考えて希望を書きます。
これらの情報は、自分が認知症になったときや亡くなった後に、周りの人に自分のことを知ってもらう手がかりとなります。また、自分がいま人生のどの段階にいるのか、人生の残り時間を実感することは、これからのことを具体的に考えるきっかけとなるでしょう。
◎医療・介護の情報…病院歴・入院歴、投薬などの記録を書きます。
これらは、治療や手術を受けるときや入院するときに必要な情報です。また、かかりつけ医やかかりつけ薬局、ケアマネージャーなども可能であれば書いておきましょう。そうすれば、急病や認知症になったときでも、周りの人がその人たちから情報を得られるので、適切なケアにつなげることができます。
⒉親族関係の整理、友人・知人などの人間関係
◎親族関係の整理…親族の氏名や続柄、連絡先などをリストにします。
親族とは、血縁や結婚でつながった人間関係のことです。手術のときの同意や、遺体や遺骨の引き取り、相続の手続きなどは、原則として親族が行うことになりますので、いざというとき誰に頼むのかを考えて準備しておくことが大切です。
◎友人・知人リスト…友人・知人の氏名、自分との関係、連絡先などをリストにしておく。
学生時代の友人やお世話になった人、現在の生活で親しくしている人など、かかわりのある人のリストを作成します。万一のときに知らせてほしい人や特に重要な人には、赤で◎をするなど印をつけておくといいでしょう。また、リストを作成していく中で、連絡を取るきっかけとなり、もう一度交流が再開することもあるかもしれません。懐かしい思い出話をしながら過ごすことは、認知症の予防や進行を遅らせるにも有効と言われています。
⒊貯蓄や不動産など、所有している財産について
◎貯蓄・預金…取引のある金融機関、支店名、担当者などを記入します(※暗証番号は書かない)。
生活費のうち、年金だけでは足りない部分や、家のリフォーム費用などは、退職までに貯めたお金から出すことになります。そこで、自分の財産がどこにいくらあるのか、預貯金などを調べて一覧表を作成します。このようにエンディングノートに財産の内容を書いておくと、亡くなったあとの相続の手続きもスムーズに行うことができ、残された人は助かりますし、どこに何がどのくらいあるのか目に見えることで安心にもつながるでしょう。
◎不動産…マイホームや相続で引き継いだ土地などの情報を書いておきます。
未登記の不動産や、私道などの固定資産税がかからない不動産も漏らさないようにしましょう。自宅やそれ以外の土地、賃貸不動産など、それらを誰にのこすのか、あるいは売却してお金に換えるのか、といったことも考えておく必要があります。
⒋お葬式・お墓や相続など死後のことについて
◎お葬式・お墓…宗教や場所、形式、規模、知らせたい人の範囲などを書きます。
お葬式の形式は家族と親しい人だけで行う家族葬が主流になりつつありますが、亡くなってからのことは、必ず自分以外の「誰か」が行うことになります。そのため、あらかじめお葬式に必要な情報や希望を伝えておくと、残された人が死後の手続きをスムーズに行えます。菩提寺や所属する教会がある人は、その所在地や連絡先も書いておきましょう。お墓については、先祖代々のお墓、既に購入しているお墓、管理している親戚のお墓などがあれば、その所在地や連絡先を記録しておきます。また、昔ながらの墓石のあるお墓ではなく、納骨堂や永代供養墓を選ぶ人も増えています。特別な希望があれば書いておくとよいでしょう。
◎相続など…まずは、家系図を書いてみましょう。(家系図の書き方はこちら)
家系図とは、簡単にいうと親子や兄弟姉妹、婚姻関係などのつながりを示した図です。家系図は、自分のルーツを考えるきっかけにもなりますし、「自分の相続人は誰か」「自分は誰の相続人になるのか」といった相続時の情報を整理するのにも活用できます。そして、「誰にどの財産を残すのか」を考えて、自分の希望や想いを書いておきましょう。しかし、自分の希望を書いたことによって、ご家族の誰かがその「遺産の分け方(遺産分割)」に不満を持ち、自分が亡くなった後に大切なご家族同士が揉めることになってしまっては、一番悲しいことになってしまいますね。可能であれば、生前にどうしてこのような分け方を希望するのか、その理由や自分の考えをご家族にお話し、納得してもらうことが望ましいでしょう。生きている間に、ご家族にねぎらいや感謝の言葉を伝え、相続に関してよく話をしておくことが、もめない相続の第一歩であり、それこそが終活といえるでしょう。
⑶最後に
いかかでしたでしょうか。ざっとですが、今「終活」が必要とされる理由や時代背景、また、「終活」とは具体的にどのようなことをするのかなど、今回は「エンディングノート」に書く内容を中心に見てきました。エンディングノートは、自分に何かがあったときに備えて、必要な情報や希望を書いておくためのものです。しかし、メリットはそれだけではありません。若いころに夢中になっていたこと、憧れていたことなどを思い出すきっかけとなり、またそれらを文字にして書き進めていくうちに、これからの目標や新しく始めたいことが見えてくることでしょう。まずは一冊、「エンディングノート」をご用意いただき、あまり気負わずに気楽な気持ちで書けることから書いてみましょう。最期まで自分らしさを大切に、いきいきと充実した時間を過ごすために、ぜひ挑戦してみてください。
当事務所代表は、終活アドバイザー協会(特定非営利活動法人ら・し・さ)認定「終活アドバイザー」のライセンスを持っております。終活について、より詳しい内容やエンディングノートの書き方などを直接お伝えすることもできますので、興味をもたれた方はぜひお気軽にお問い合わせください。お待ちしております。
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