遺言書は何をどのように書けばいいの?~代表的な2つの遺言書とその特徴~

 遺言は、自分の死後に誰にどの財産を残したいかなど、その人の意思を一定の方式にしたがって書面にしておくことで、その最期の意思が実現されるように法的に保障する制度です。遺言書は法律に定められた方式にしたがって作成される必要があり、方式にしたがっていない遺言書は無効となってしまいます。遺言書にはさまざまな種類がありますが、実際によく活用されているのは自筆証書遺言公正証書遺言です。ここでは、この代表的な2つの遺言書について、その特徴や方式、作り方の注意点をみていきましょう。

⒈遺言の種類と求められる厳格性

遺言はまず、普通方式特別方式とに分けられます。普通方式の遺言には、冒頭で述べた自筆証書遺言公正証書遺言のほか、秘密証書遺言があります。特別方式の遺言は、普通方式によって遺言をすることが不可能であるか、あるいは難しい場合に用いられ、大きく危急時遺言隔絶地遺言というものに分けられます。(【図1】参照)

 遺言は厳格な方式が要求されており、この方式にしたがっていない遺言はその効力が認められません。有効に成立した遺言書の内容の一部を訂正したい場合も、厳格性が求められ、所定の方式を備えないとその訂正は無効となっていしまします。また、自筆証書以外の方式による遺言については、その作成にあたり証人立会人を必要としており、未成年者や推定相続人、その配偶者などはこの証人や立会人になることができないなどの規定もあります。そして、遺言は必ず一人が一つの証書でしなければなりません(共同遺言の禁止)。同一の証書に2人の遺言が記載されている場合はその遺言書は無効になります。本当に本人の最終の意思であるかどうかを明確にしておく必要性があることからも、このように遺言は厳格な方式が要求されているのです。

⒉自筆証書遺言と公正証書遺言

では、代表的な2つの遺言書である自筆証書遺言公正証書遺言については、どのような方式が要求されているのでしょうか。その作り方や注意点をみていきましょう。

⑴自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が、遺言の全文日付及び氏名をすべて自筆し、これにを押さなければなりません。作成日が特定できないもの、印鑑を押していないもの、他人が代筆したものなどは無効となります。ただし、財産目録については、パソコンで作成したものや、通帳や登記事項証明書のコピーに署名押印して添付することが可能です。また、遺言の内容を一部変更する場合ですが、その場所を指示し、変更した旨を記してこれに署名押印しなければ、その訂正の効力が生じません。後で争いを起こさないようにするためにも、内容を変更するときは、一部を変更するのではなく、全文を書き直しする方がよいでしょう。自筆証書遺言は相続開始後、原則として裁判所で検認の手続きが必要です。ただし、遺言書保管所に保ている自筆証書遺言については、家庭裁判所の検認を必要としません(自筆証書遺言保管制度)。

⑵公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が遺言者の口授(口頭で直接伝えること)をもとに公正証書として作成する遺言です。公正証書によって遺言をするには、以下の方式にしたがわなければなりません。
①証人2人以上の立会いがあること。
②遺言者が遺言の趣旨を口授すること。
③公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させること。
④遺言者及び証人が、筆記が正確なことを承認した後、各自これに署名押印すること。
⑤最後、公証人が、その証書は上記の方式にしたがって作ったものであることを付記して、これに署名押印すること。
 公正証書遺言は、原則として公証役場で作成しますが、病気などで外出できないときには、自宅や病院などに公証人にきてもらって作ることもできます。作成された公正証書遺言の原本は公証役場に保管されますので、紛失や偽造、廃棄のおそれがありません。また、相続開始後は、家庭裁判所での検認も不要です。ただ、作成までには、財産目録や登記事項証明書、戸籍謄本、印鑑証明書など、さまざまな書類が必要となり、準備に時間や手間がかかるでしょう。

⒊最後に

最後になりますが、自筆証書遺言と公正証書遺言の長所と短所をまとめました(【表1】参照)。

 法的に有効な遺言書があれば、遺産分割協議を行わなくても相続の手続きができ、のこされた人同士のトラブルも未然に防ぐことができます。また、相続人の中に認知症や知的障害などにより、遺産分割協議に参加することが難しい人がいる場合には、遺言書をのこしておくことで、その人たちの権利を守ることができます。このように、遺産分割の希望を実現するには遺言書をのこしておくことは大変有効ですが、そのような分け方を希望する理由や遺族へのねぎらいや感謝の言葉も事前に伝えておきましょう。自分の考えをご家族に伝えて、よく話をしておくことが、もめない相続の第一歩となります。争いを避けるための対策として、遺言書の作成を検討してみてはいかかでしょうか。

 当事務所では、「遺言書の原案の作成」を承っております。遺言書を作成しておくことで、遺産分割協議の手間を軽減し、残された人同士のトラブルも未然に防ぐことができます。また、相続業務に関しては、「相続情報一覧図の作成」「遺産分割協議書の作成」「財産目録の作成」を中心に書類作成業務を承っております。相続人が複数人いらっしゃる際は、中立な立場に立ち、それぞれの思いや考えを尊重しながら、誠心誠意対応してまいります。相続や遺言に関することで困りごとやお悩みごとがある際は、どのような小さなことでも大丈夫ですので、ぜひ、お気軽にご相談ください。
   
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